10のライフスキルは、それぞれ補完関係にありますので、まとめると次の5つに集約されます。
もっとも、弱いライフスキルに他のライフスキルも引き下げられる結果になります。
1.自己認識スキル(自己認識・共感性)
2.意思決定スキル(意思決定・問題解決)
3.コミュニケーションスキル(効果的コミュニケーション ・対人関係)
4.目標設定スキル(創造的思考・批判的思考)
5.ストレスマネジメントスキル(感情対処・ストレス対処)
ここでは100年時代のライフシフト(ワークシフト)に欠かせない意思決定スキル(意思決定・問題解決)についてお話します。
意思決定スキルの際立った特長は単に決断するスキルではないことです。問題解決スキルと相互補完の関係にあるように、敵さえ味方にするスキルです。
意思決定スキルは極めるスキル
「人生100年時代」という言葉から、人はそれぞれにいろんなことを想像します。
ありたい姿(ビジョン)と現実を比べたときに、年齢に関係なく、創造的緊張が生まれて、切れるか、あるいは張りつめた状態のまま、どのように維持するかに分かれます。
意思決定スキルの出番です。意思決定は、特定のビジョンを達成するために、ある状況において複数の代替案から、最善の解を求めようとする認知的行為のことです。
オリンピックでスケボーやサーフィンでメダルを獲得した奴らのように(あえて「奴ら」と畏敬の念をもって、そう呼ばせていただきます)ありたい姿に傾く人には現実を敵ではなく味方につけます。
ありたい姿にはまだ届いていない現実と手を組んでありたい姿に向かって協働します。
この段階で100年生きる褒美は、生きることそのものになります。
そうして身につけた感情は肉体と同じようにさらに発育を求めて、天命になります。
天命を全うした「いのち」は、それだけで十分美しいものです。
自己マスタリー
この絵は「北斎ブルー」と呼ばれる世界を驚愕させた70歳前半の作品。
「青の革命(Hokusai and Blue Revolution)」として有名ですが、北斎自身の革命はこの後に起こります。
「学習する組織」でおなじみの「自己マスタリー」とは、「習熟」に緊張の解決を求めて、学びにいのちを投資すること。
高い成熟に達するには、目先の満足に甘んじない緊張が自然発生的に内部で起こり維持します。
自分の選択があとあとに及ぼす影響を自分自身を総動員して考え抜き行動します。
「エンドレスにワンダフル」であるために、どうあるべきか?
他の人なら見向きもしない些細なことを通して自分を極めるのです。
なぜなら彼らは見えないものが見えるメガネをつけているからです。
見えないものが見えるメガネ
「見えないものが見えるメガネ」とは、ライフスキルに他なりません。
他の人なら見向きもしない些細なことが見えるのは、ライフスキルの成熟によるものです。
それは時には冷笑の対象にされます。
見えないものが見える人にとって、冷笑は気分の良いものでないだけでなく、時には抵抗になることもあります。
「見えないものが見えるメガネ」で世の中を見ていこうとする者、つまり意思決定をする者にとって抵抗は厄介です。
たとえば自身が、その大切さ身をもって感じて、リーダーシップを発揮して、属する組織に拡大しようとしたとき、抵抗を取り除くことは面倒な作業を強いられることになるからです。
意思決定が抵抗に出会ったとき
そこで意思決定スキル(Decision Making Skills)の本質が顕在化します。
もし、属する組織に一貫した目標や方向性がない場合、棒にも箸にもかからないような未熟なりーだーに意思決定が簡単に任されるようなら、逆効果になるからです。
意思決定スキルは、人生における人徳を高めることが前提にあることが基準です。
その上での同時に経済的な成功がついてくるのが調和のとれたスキルなのです。
つまり人を食い物にするような考えがあると、総崩れになるものなのです。
高度な意思決定スキルとは、速い学びのスピードを有していて、自らが全力で打ち込み、責任感も強くて広い。自分に対する責任、ステークホルダーに対する責任、出会う人々への責任が機能する考えを持ち、率先して働き、決定にあたっては、鍛えた洞察力を活かして些細なことまで緻密な目配りができる能力。個人生活はもちろん、仕事にも拡大できるスキルです。
つまり意思決定がもっとも厄介な抵抗である冷笑に晒されたとき、冷笑の本質に向き合い、共通のビジョンを探らなければなりません。なぜならほとんどの人は「ライフスキル」に見向きもしない態度を物質主義に組み込んでしまったからです。冷笑は失意の名残りです。「そんなことを言ってもそれが何になるの?何と交換できるの?」という思いが、人生のどの段階かで、人間への失意がこびりついてしまったのです。古いほど厄介ですが、裏返すとそこには寂しさが潜んでいます。
見えないものが見えるメガネには、それが見えるし、巻き込む力を備えているものです。なぜならもともと共感しあえるプロセスを辿っていたからです。
冷笑する側からすれば「もっと早く会いたかった」と言えるものだからです。
問題解決スキルと相互補完の関係にある意思決定スキル
ライフスキルはその人の内側から生まれて、育つものですが、本人は無意識なものです。
太陽にむかって咲く花のように、なにかに向かってはいても、それがなにかは人によって違います。なにかをなすためのスキルもあれば、なにかから逃げるスキルもあります。
何を意思するのかは、何をどう解決したいのかと密接に絡んでいます。
なぜ自分は生きているのか、目的はすべてのスキルと深い関係にありますが、具体性に欠ける方向性でしかありません。一方、ビジョンは「今年中にこれを完成させる」というように具体的です。
意思決定スキルは、数多い目的からビジョンを選択して、それを実現するために問題解決を行うスキルです。巻き込む力の源泉はそこにあります。それはビジョンを明確にするのと同じくらい重要です。なぜならなにかをなすためのスキルは、何から逃げるスキルと同じだからです。人はなにかを成し遂げた後にも、逃げようとするからです。たとえば会社の仕事は必死にやるが、その分家庭は顧みないというようなことは頻繁に起こります。これでは本当の意味でライフスキルがあるわけではないからです。
「ライフスキルが十分な社員を一人でも多くすることで、会社はひとりひとりの家庭にも真の恩恵をもたらすことができる。」というのが目的なら、選ばれたリーダーシップは見えないものが見えるメガネで現実的なビジョンを選択して自律的な働き方は日常化していくでしょう。
猫の手を借りるように、潜在意識を使い倒す
潜在意識には、大乗仏教の見解の一つである「唯識」がいうところの根本心である「阿頼耶識(あらやしき)」と自己執着心である「末那識(まなしき)」があります。
「阿頼耶識(あらやしき)」はすべての記憶を貯蔵しています。
「阿頼耶識」のおかげで意識では説明できない複雑なことをやり遂げる力を発揮します。
京セラの稲盛氏は次のように述べられています。
高い目標を達成するには、まず「こうありたい」という強い、持続した願望をもつことが必要です。新製品を開発する、お客様から注文をいただく、生産の歩留りや直行率を向上させるなど、どんな課題であっても、まず「何としてもやり遂げたい」という思いを心に強烈に描くのです。
純粋で強い願望を、寝ても覚めても、繰り返し繰り返し考え抜くことによって、それは潜在意識にまでしみ通っていくのです。このような状態になったときには、日頃頭で考えている自分とは別に、寝ているときでも潜在意識が働いて強烈な力を発揮し、その願望を実現する方向へと向かわせてくれるのです。
顕在意識ではできないことが、潜在意識の領域まで使うことで達成できると言い切っています。何から逃げるスキルをなにかをなすためのスキルに動員することで、障害を減らし、味方にするのです。
私たちは普段、障害を作り出すスキルを忘れて考えます。
猫の手も借りたいというように、逃げ出すスキルを使うのです。
猫は手伝ってくれませんが、障害は手伝ってくれるのです。
平凡を非凡に変えるスキル、それが意思決定スキルです。
見えないものが見えるメガネで物事を見抜き、障害となるスキルを拝借して味方につける。
意思決定スキルは、敵を全部味方にすることで、平凡を非凡に変えるスキル。
冷笑さえ味方にする。それが意思決定スキルです。
問題解決スキルと相互補完の関係にある意思決定スキルは問題解決にも使わないと育ちません。